彼の背中についていく。
彼が急に止まったから、
私は彼の背中にぶつかってしまった。
「すいませ……」
「ここです」
ほら、と言って彼は私の後ろにまわって、優しく私の両肩を包んだ。
「綺麗……」
と、思わず声が漏れてしまうほど、
そこは本当に綺麗な場所だった。
透明よりも透明な透き通った綺麗な水が流れる湖。
その湖に優しい光を照らすのは、月。
永遠に、
この風景を見ていたいと思った。
「この風景を……
朝見ても、素敵なのかしら」
一瞬、玲さんが眉をひそめた。
私は、言ってしまってからはっとした。
彼は見たくても見れないのに。
私と彼は違うのに。
「この場所は、特別です」
そう彼は言った。
「全てが悪に染まるはずの夜が、
ここだけは優しく見える」