訳がわからない。
私のためなら、引き離すようなことをしないで。
視界が滲む。
だけど、泣いてなんていられないことはわかってる。
「お願いです、やめてください!」
「……じゃあ、彼のことを忘れますか?」
ピタリ、と私の動きが止まった。
何も言うことができなかった。
私は体の力がぬけてその場に座り込んだ。
「もう一度、考え直してください」
そう言い残して去っていく高藤さんの背中を何も言わず見送った。
何もできないなんて。
こんなときに、何もできない私が無力で。
ただ、
むなしい想いだけが
私の中を支配していた。