高藤さんはジャケットの裏ポケットから一枚の紙切れを取り出した。
そうして、私に渡す。
「彼のことですか?」
その紙を見て私は息が止まりそうだった。
紙切れだと思ったものは、写真だった。
あの雨の日、
まだ何もわかっておらず微笑んでいる私と玲さんだった。
私は写真から顔を上げて高藤さんを見る。
「うそ……」
高藤さんは私の手から写真を取り上げて言った。
「貴方を守るためです」
「私をどうするおつもりですか?」
私が訊ねると、高藤さんは目を鋭くさせて言った。
「もう、彼とは会わせません」
さっと血の気が引くのがわかった。
私は高藤さんの手から写真を奪い返そうと試みた。
だけど高藤さんの手を少し上に挙げられたら届くはずもない。
「やめて!」
「これも、貴方のためなんです」