* * *



次の日の夕暮れ時、


私は高藤さんを私の家の離れにある岬に呼び出した。



高藤さんは私を見つけると、微笑んで駆け寄った。


百合の言っていた意味は十分にわかっている。


こんな素敵な人、他にはいない。

私にはもったいないくらい。



嫌いになったわけじゃない。


だけど、もともと恋愛感情は無かった。



だから、もう言わなきゃいけない。



私は高藤さんに頭を下げた。


いまさら、

高藤さんに見せる顔なんてないのはわかっている。



「婚約の件を白紙に戻して欲しいんです」



高藤さんは目を丸くした。



「何故ですか?」



そう言われることは承知していた。


だから、正直に話すしかないと思っていた。



「好きな人ができたんです」



高藤さんはどんな反応をするだろう、と思った。


やはり、親に言われるのだろうか。



「それは……」