きっと、彼は私が彼を軽蔑しているのだと思っているのだろう。
あのとき、“していない”と言ったのに。
私は自分の手を握って、うつむいて呟いた。
「ごめんなさい。でも私……」
彼は何かを決心したように、今度は優しく私の手を握った。
「今度は、ゆっくり歩きます」
私は、伝わっていたんだと思って胸の痛みから開放される。
「……どうしてそのこと」
「だって、僕のことを軽蔑していたらすぐに逃げるはずでしょう?」
ああ、そっか。
そんな貴方にどんどん惹かれていく。
彼に手を引かれて、街の少しにぎわっている方へ進んでいく。
前の香水店にいろいろな雑貨店が並んでいる。
すると、ぽつりぽつりと雨が降り始めた。