次の日、
少し混乱する頭で街に出た。
空は曇っていて、今にも雨が降りそうだ。
早く帰ろうと思い家へ向かおうと一歩踏み出したとき、
後ろから誰かに手をつかまれた。
一瞬、誰かと思ったが手のひらの冷たさからわかった。
「玲さん」
「お出かけですか?」
「ええ。でも、雨が降りそうだから……」
もったいない、と彼は言った。
彼の口調はまるで、昨日までのことは全然覚えていないようなフリだった。
彼は私の手を握ったまま家と反対の方向へ歩き出した。
私は急に怖くなって、手を振り解いた。
軽い音をたてて、離れた私と彼の手。
私はやってしまったと思った。
だけど、どうしても私の手の震えは止められなかった。
彼は驚いた顔をしていたが、何かを覚ったように悲しげに笑った。
「すいません」
胸がぎゅうと締め付けられる。
私がしてしまったことの大きさに、自分で自分を恨みそうになってしまう。