僕は彼女の名前を呼ぶ。




「憂」




どうして僕は彼女の名前がわかったのだろう。



全て忘れてしまったはずなのに。


それなのに、

僕は彼女の名前を呼んでいた。


彼女は僕の声に顔を上げて言った。




「"玲"です。

 貴方の名前は」




僕は微笑んで答える。




「そうみたいだ」




彼女は真っ直ぐな瞳で僕を見た。

強くて

美しい瞳だった。