薔薇の欠片




『無いですよ。

 吸血鬼ってそういう生き物じゃないっすか?』



それから、何かが違うと思った。



海は“呂依は吸血鬼らしくない”と言っていたことがあった。


だけど、

吸血鬼らしくなかったのは僕だ。



ずっと前、


吸血鬼として目覚めた少し後のとき、

夢をみたんだ。



太陽の下にいて、笑っていた。




僕は、“太陽”を見たことがないのに、

その下で笑っていたんだ。




不思議だろう?


そして、
今頃になって幸せな夢だと気づくんだ。



この夢が、現実になってくれないかと願う。


その太陽の下に君もいて欲しい。



そう考えている間にも、

小鳥たちがさえずりだした。