薔薇の欠片



僕が向かった先はあの湖だった。



アイツが、いなくなってしまった場所。


呂依が光の中へ還っていった場所。




僕は湖の側に立っている木に寄りかかって座る。




そっと、目を閉じる。




本当は、一度も眠ったことが無かった。


目を閉じても、

見るのは悪夢だけ。


太陽を浴びる夢だけだったから。



眠らなければそのうち気が狂ってしまうんじゃないかと思ったが、そんなことはなかった。



それどころか、
眠くならない。



やっぱり僕は吸血鬼なんだと思った。


一度だけ、呂依に訊いたことがある。



『お前は眠ったことはあるか?』



呂依は不思議そうに首をかしげて、