薔薇の欠片



「わかってますよね? 僕には体温が無い」



僕がまだ吸血鬼として未熟なときに、

コップに入れた水を持ったら、その水が凍った。



「髪だって、目の色だって銀色。
 人を殺す牙だってもってる。

 自然治癒力も並大抵じゃない、あんな銃弾を喰らっても僕は死なない」



人間の女に引っかかれた傷なんて、1分もしないうちに治った。


あのときのことを思い出すと、
馬鹿馬鹿しくて笑えてくる。



「それに、
 貴方と会うときはいつも晴れていない日を選んだ」



彼女は考えるように呟く。



「それは……」



そう、と僕は言った。



「日の光になんてあたれない
 それが何を意味するか?」



もう、わかっているんだろう?



「貴方はやっぱり……本物の……」


「そうさ」



彼女の瞳は見ていられなかった。





「僕は、


 吸血鬼だ」




きっと彼女は軽蔑はしてはいない。

だけど、それでも息を呑んだのは僕が怖いから、かな。