薔薇の欠片



僕に殺される夢でも見たのか。



「顔色が悪いですよ」



彼女はバツが悪そうに俯く。


軽く寝癖がついた髪が、前に垂れる。

茶色く、やわらかそうな髪。



全部、僕の物になるのだろうか。



「玲さんは……」



独り言のように彼女は僕に言った。




「玲さんは、

 本当に吸血鬼なんですか?」




彼女はまだ信じられないのか。

僕がそうだということを。


近づいても、まだ信じたくないのか。


僕はため息をついた。



「確か、前も言っていましたよね。
 もう、わかっているんでしょう?」


「貴方の口から聞きたいです……」



僕は彼女の手を取る。


僕にとっては熱すぎて、火傷しかねなかった。

逆に彼女にとっては
僕の手は冷たすぎて、凍ってしまいそうなのだろう。



僕は彼女の瞳を捕らえた。