薔薇の欠片



僕は牙を戻した。


そして、
代わりにもう一度彼女にキスをした。



まだ、だ。


時間はいくらでもある。

ゆっくり考えていけばいい。



僕はベッド脇に背中を預け、片肘を立てて座りそのまま眠った。


目が覚めたとき、
彼女がいないことを願った。



全部夢だったらいいんだ。


そうすれば、
こんなに悩むことなんて無い。




* * *



目が覚めたとき、
彼女はすでに起きていた。

僕は座ったまま伸びをする。



「憂さん、起きてたんですね……」



夢ではないんだ。


彼女が今、ここにいることは。



彼女は頷くと気まずそうに言った。



「はい……、なんだか目が覚めちゃって」



僕は問う。



「悪い夢でも見たんですか?」


「…!」



彼女はあからさまに驚いた。