きっと、彼女は無意識のうちに言っていたのだろう。 もう一度、消え入りそうな声で 「玲さん……」 僕は、 何も言わずに彼女を抱えた。 彼女の母親は泣き叫んでいた。 父親は母親を掴んで、 止めようとしていた。 「行かないで!」 ……どうしてそこまで愛しているのなら 彼女を一人にしたんだ。 彼女が一人じゃなかったら、 僕の手を放したときに逃げていただろう。 僕は彼女を抱えたまま、 宙に浮いた。 彼女は顔をうつむかせていた。