薔薇の欠片



マントが破れ、
布切れは夜の闇に溶けていった。



僕は人間ではない。


体中が、傷口をものすごいスピードで塞ごうと機能している。



「……僕を誰だと思っているんだい?」



僕は冷たく言い放った。


顔を伏せていた彼女は、僕の声に気づき傷口を見た。



「うそ……」



“うそ”じゃない。


男は、顔つきをさらに鋭くして僕を睨む。



「やはり吸血鬼……!」



そして、

彼女の部屋のドアが開いた。



「憂」



彼女を呼ぶ声。


……ドアを開けて立っている2人は、彼女の両親だろう。



「もうやめてちょうだい」



彼女の母親が、
眉に皺を寄せて悲しげに言う。



それでも彼女は振り向かなかった。