薔薇の欠片



僕は黙って彼女の手を握ったまま歩き出した。


手袋はしていたが、彼女の体温が火傷してしまいそうなくらい温かかった。



そして、
彼女は急に僕の手を振り解いた。



驚いた。



彼女は僕の手の冷たさに驚いたのか、

それとも……



彼女は手の震えを止めようと必死だった。


……僕が怖いのか。



「すいません」



僕は彼女に謝る。


そう言うと、彼女は自分の手を握ってうつむいた。



「ごめんなさい。でも私……」



僕はもう一度彼女の手を握ってみた。



「今度は、ゆっくり歩きます」



答えが合っているのかはわからない。

だけど、言ってみた。


彼女は控えめに訊ねる。



「……どうしてそのこと」