「久方ぶりでありんす。今井様。」






ひと月ほど経った、凪雛の座敷。






「凪雛、例の件ありがとう。」







品のある笑顔で、凪雛と向かい合うのは今井様。






尚五郎の父親だ。






「いえいえ。こちらこそですよ、今井様。アタクシの禿なんかに・・・」








「尚五郎は、母親が死んで以来塞ぎ込んでいた。心をな。」






「それを、アンタさんの禿は支えてくれた。尚五郎を再び立ち直らせてくれた。」







凪雛は、酒を薦めた。







「雪月こそ、失礼な真似をしてしまいましたが・・・」







今井様は、ははっと笑った。






「女にぬかしていた尚五郎にとっては、良い薬となった。」