「雪月は、引っ込みの間に随分といろいろなことを学んだな。」






雪月が去った後の、凪雛の座敷。







女将が訪れていた。






「そうでありんすか?」







「ああ。凪雛、オマエにしては珍しい。禿の修行には時間をかけるオマエがなぁ・・・」







凪雛は、女将に座布団を薦めた。






「何がいいたいのか、わっちには分かりんせん。」







「何を急いでいるのか、と聞いているんだ。」







女将は、あやしく笑いながら言った。







「別に、急いでなんかありんせん。雪月は、天性の才がありんす。」







話を変えるように、凪雛が言った。






「ああ。母さんに似てるよ。先秦倶の伝説花魁だった・・・華徠に。」







「・・・女将さん、ご存知なんでありんすか?いえ、親しかったんですか?」







「昔々の話さ。」






そう言って、スルリと凪雛の部屋を出た。