10センチ彼氏

復活したように、涙が急に流れ出した。

でもこれは、嬉し涙である。

「だから、由美子ちゃんも幸せになってね」

由美子先生の微笑んだ顔が見えたような気がした。

「――ありがとう…」

泣きながらだけど、由美子先生が言った。

「じゃあ、またね」

「さよなら」

わたしは涙をふくと、子機を手に取った。

「もしもし」

「鈴木さん、ありがとうね」

由美子先生が微笑んでいるのがわかった。

「はい」

わたしは返事した。

「それから、お幸せにね」

何ですって?

聞こうとする前に、ブツンと電話が切られた。

耳から子機を離したわたしは、泣いたばかりの目をパチパチさせた。

“お幸せにね”って…えっ、どう言うこと?

「小雪ちゃん?」

君博さんが名前を呼んだ。