10センチ彼氏

君博さんが何を答えても、泣かないって決めたのに…。

泣いちゃダメなのに…

こらえることができなくて、君博さんの前でまた泣いてしまった。

「――由美子ちゃん?」

君博さんの声が聞こえた。

手で涙をふいて視線を向けると、子機に向かって――正確には由美子先生にだけど――話しかける君博さんの姿があった。

「――君博さん…?」

少しの間があって、由美子先生が君博さんを呼んだ。

泣いているのだとわたしは思った。

間があったのは彼の声が聞けて、つい涙が出たのだと思った。

「――ごめんなさい…」

震えた声で、由美子先生が言った。

「僕も悪かった。

言い過ぎたって、思ってる」

優しい声で、君博さんが言った。

そのそばで、わたしは泣きながら見ていた。

ちょっかいも何も出さずに、ただ黙って見ていた。