10センチ彼氏

泣きそうになるのをこらえながら、ようやく番号を打ち終えた。

決められたように鳴る機械音が耳に痛い。

由美子先生に出て欲しいと思っている自分と出て欲しくないと思っている自分がいる。

プツッと音がしたのと同時に、
「もしもし?」

由美子先生が電話に出た瞬間、わたしは深呼吸をした。

「由美子先生、ですか?」

そう言ったわたしに、
「鈴木さん?」

「今、君博さんに変わります」

何か言いたそうな由美子先生をよそに、わたしは君博さんの前に子機を置いた。

我慢の限界だった。

限界が限界を呼んで…彼に背中を見せた瞬間、わたしは手で顔をおおって泣き出した。