「君博さん」

わたしは、君博さんを呼んだ。

「どうしたの?」

これから話すことを何も知らない君博さんに、わたしは泣きそうになった。

けど、こらえることにした。

だって、君博さんのためなんだもん。

「――渡部由美子さん、知ってますか?」

わたしは言った。

由美子先生の名前を出したとたん、君博さんは驚いた顔をした。

ビックリするのも当然だよね。

自分しか知らない人の名前を、わたしが知ってたらビックリするよね。

「どうして、由美子ちゃんのことを知ってるの?」

由美子ちゃん――由美子先生のことをそう呼んでたんだ。

「――実はね…」

わたしは、これまでの出来事を全て話した。

産休代理の先生として由美子先生が現れたこと。

彼女の婚約者が君博さんだと知って、夢に出るくらいずっと悩んでいたこと。

由美子先生が君博さんに謝りたいと思っていることを、全て話した。