10センチ彼氏

泣いているのだと、わたしは思った。

「今思うと…君博さんは、私のためを思ってくれたんだって思う。

でも私、すごくカッとなって…心にもないことを言って、君博さんを困らせた」

バタッと崩れるように由美子先生は床の上に座り込んだので、わたしは駆け寄った。

由美子先生のキレイな顔は、涙で濡れていた。

「“あなたなんて、いなくなっちゃえばいいのに!”…そう、君博さんに向かって言ったの」

由美子先生は洟をすすった。

「その時の彼の表情、忘れられなかった。

つらそうな、悲しそうな、痛そうな…そんな感情が混ざったような表情をしていた」

由美子先生は懺悔をするように、泣きながら言った。