10センチ彼氏

「ご結婚されているんですか?」

わかっているのに、わたしは何故か聞いていた。

と言うか、条件反射みたいにその質問が出てきた。

わたしの質問に由美子先生は、
「あら、どうして?」
と、笑いながら言った。

「――指輪…」

わたしが小さく呟くように言うと、由美子先生は悲しそうな顔をした。

変なことを聞いちゃったかも。

「すみません、変なことを聞いちゃって!」

わたしは慌てて謝った。

「いいのよ」

慌てるわたしに、由美子先生が微笑んだ。

その微笑みは、悲しそうだった。

由美子先生が歩き出したので、わたしも歩いた。

「正確に言うとね、これは婚約指輪なの」

「婚約指輪、ですか…?」

誰かと結婚の約束をしてると言うことですよね?

「でも約束してくれた人は、いなくなった」

そう言った由美子先生に、
「えっ?」

わたしは聞き返した。