10センチ彼氏

えっ、終わったんですか?

「今日はノートの提出をしますので、日直は放課後にクラス全員分のノートを持って職員室にきてください」

由美子先生が言った。

日直って、わたしのことじゃないのよ…。


その日の放課後。

「――重い…」

わたしは全員分のノートを持って、職員室に向かっていた。

由美子先生、人使い荒過ぎ…。

本日の日直は女の子なのに…。

その女の子に全員分のノートを職員室まで運ぶって…。

「あら、ご苦労様」

由美子先生だった。

「あんまり遅いからきちゃった」

あんまり遅いからって、当たり前です!

全員分のノートを持って早く行ける訳ないでしょ!

「半分持ってあげる」

「ありがとうございます」

わたしの手から由美子先生がノートを半分奪った。

左の薬指にキラリと光る指輪は、飾りも何もないシンプルなシルバーのリングだった。