「よそ見しちゃ嫌ですからね?」

確認するように、わたしは言った。

「大丈夫だよ」

そう言うと、君博さんはわたしの頬にキスをした。

「小雪ちゃんもよそ見しないでね」

する訳ないじゃない。

こんな彼氏がそばにいるのに、よそ見する訳ないじゃない。

「大丈夫です」

キスのお返しができない代わりに、わたしは彼を見つめた。

それから、微笑みあった。

でも、わたしたちは気づかなかった。

本当の嵐が、すぐそこまできていたことを。

その嵐がわたしたちの幸せを崩壊することを、まだ気づいてなかった。