「そんなに謝られてしまったら、何も言えなくなります」

そう言った大森くんに、わたしは口を閉じた。

「好きな人がいるのでしたら仕方ありません。

それを知らず、あなたに近づこうとした私をお許しください」

大森くんの顔は悲しそうだった。

「わたしの方こそすみません、あんな返事をして」

「じゃあ、もういいですね」

そう言った大森くんに、わたしは首を縦に振ってうなずいた。

「その代わり…」

ポンッと、大森くんがわたしの肩をたたいた。

「そのお方と別れたら、私のところにきてくださいね♪」

微笑んでいるその顔に全くと言っていいほどあっていない悪魔のささやきみたいな言葉に、ギャップの温度差を感じた。

絶対に別れませんから!