10センチ彼氏

急に重たくなった足取りで、わたしは帰りを急いだ。

その間、わたしの涙は止まらなかった。


家に帰ったのと同時に、わたしはカバンをテーブルのうえに置くとそこでうつ伏せになった。

あふれてくるのは、涙ばかりだ。

「――どうしてなの…?」

嫌いなら、「嫌い」って言ってくれた方がありがたかった。

そうしたら…。

「――小雪ちゃん?」

いつの間に、カバンから出てきたのだろうか?

心配そうな顔をした君博さんがわたしの目の前にいた。

「――さっきの人、この前別れた彼氏だったんです…」

呟くように、わたしは言った。

どうして言ってしまったのか、わからなかった。

彼に失恋話を聞かせたい訳じゃないのに。