10センチ彼氏

たくさんある生地の中に、君博さん好みの生地があるのだろうか?

「そうだな、僕は結構シンプルなのが好きだな」

「シンプル?

じゃあ、これはどうですか?」

わたしが山から取り出したのは、淡いブルーの千鳥格子の生地だった。

「いいね、結構好きかも」

「じゃあ、決定ですね♪」

何か、本当にデートみたいだ!

隣に君博さんがいたら、まさに本当のデートだよね?

わたしは1人で浮かれていた。

「下に…下に着る物は、どうしますか?

デニムにしますか?」

浮かれているのがバレバレな状態で、わたしは君博さんに聞いた。

「じゃあ、そうしよっかな」

そう言った君博さんに、わたしはデニムの生地を手に取った。

「あ、この柄いいな」

気に入ったと言うように、君博さんは生地の山を指差した。