10センチ彼氏

「男物の服を作る生地が欲しいんです…」

そう言ったとたんに、わたしは恥ずかしくなった。

だって、すっごい勇気がいるんだもん…。

「彼氏ができたんですか?」

「いや、彼氏って言うか…」

チラッと、わたしは君博さんに視線を向けた。

君博さんはポケットから顔を出して、物珍しそうに店内を見ていた。

その姿、すごくかわいいです!

「生地はあちらの方ですね」

店員は生地の山を指差すと、他のお客さんの接客へと向かった

彼氏か…。

ほんわかとした気分に包まれながら、わたしは生地の山に足を向かわせた。

まだ店内を見回している君博さんに、
「ねえ」
と、わたしは小さな声で声をかけた。

「何?」

「君博さんって、どんなのが好みですか?」

生地の山を指差しながら、わたしは質問した。