「ここって…?」

そう聞いてきた君博さんに、
「手芸屋さんです」

わたしは答えた。

わたしたちは街中の手芸屋さんの前に立っていた。

「どうしてここに?」

続けて聞いてきた君博さんに、
「服が欲しいですよね?」

わたしは言った。

そう、わたしは君博さんの服を作るための生地が買いたくて訪ねてきたのだ。

「作れるの?」

「任せてください♪」

自慢じゃないけれど、わたしは手芸が得意だ。

ぞうきんから自分の服まで、何から何まで作ることができるのだ。

自動ドアを抜けると、わたしたちは中に入った。

「いらっしゃいませ」

顔見知りの店員が迎えてくれた。

「すみません、服を作りたいんですけど」

「ああ、洋服用の生地ならあちらの方に…」

「いえ、そうじゃないんです」

そう言い返したわたしに、店員は首を傾げた。