マグカップの横に脱ぎ捨てられた服が丁寧にたたんで置いてある。

あー、それでわたしを後ろに向かせたのね…。

「いいお湯加減だね…」

そう言った君博さんとわたしの目があった。

…何故だかよくわからないけれど、わたしたちの間に気まずい空気が流れた。

わたし、何かした?

そう思った瞬間、火がついたのかと思うくらい君博さんの顔が真っ赤になった。

「ちょっ、ちょっと後ろ向いてって言ったじゃない!

僕がいいって言うまで後ろ向いてって言ったじゃない!」

君博さんが慌てふためいたので、
「えっ、ええっ!?」

理由がわかったので、わたしも慌てふためいた。

後ろ向いててとは言ったけど、それ以外は何も言ってなかったじゃない!

要するに、お風呂に入っている間だけ後ろ向いてって言う意味だったの!?

「そ、それを早く行ってよ!」

お風呂に入った訳じゃないのに、わたしの顔も紅くなっていた。