「誕生日おめでとう」 三歩先を歩いていた彼がゆっくりと振り返りながら、その薄い唇を開いた。 「知ってたの?」 「当たり前だろ。お前がいつ言うか待ってた」 そう言って彼はスッと手を私に差し伸べた。 彼の手はきれいだ。 男の人にきれいなんて言葉は変かもしれないけれど、彼がギターの弦を撫でる仕草も 料理をする手つきも 私の髪を撫でる指も、 その先の爪も、 すべてが愛おしかった。