怪我した緋乃に、そっと近づく王子様。 俺には、奴の姿がそう映った。 その途端、足が動かなくなった俺は、ただ二人がいなくなる様子を見ているしかなかった。 そんな事を考えながら、隣りの緋乃を見る。 緋乃は、さっきよりも真っ赤な顔で奴を見つめている。 鈍感な俺にだってわかる。 緋乃は奴が好きなんだって。 でも、きっと恋愛に疎い緋乃の事だから、それは恋じゃなくて憧れなんだと思う。 中学生なんて、奴から見れば子供だ。 勿論、俺も含めて。