思わぬ所から声をかけられ、びっくりして振り向く私。
そこには、昨日のスーツの彼が自転車を引いて歩いていた。
驚きを隠せない私を見て、彼が吹き出す。
「そんなにびっくりした?」
笑われてる!
私、そんな変な顔してたのかな?
あれほど会いたいと願ったはずなのに、いざその人を目にすると、会いたいと思った事を撤回したくなった。
恥ずかしくて……
恥ずかしくて……
早くこの場から逃げてしまいたい!
私は足が痛い事も忘れ、早歩きで進む。
彼は呆然としていたけど、私がつまずくとその大きな手で、優しく身体を支えてくれた。



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