無言で俯く彼女。 「大丈夫。長澤は試合近いんでしょ?練習遅れたらマズイじゃない?」 そう強引にバッグを俺から奪い返すと、ふらふらと再び歩き出した。 呆然と、俺は緋乃の後ろ姿を見ていた。 断られた事にも驚いたけれど、 あいつの口から“長澤”って言われた事の方が俺にはショックで。 そっか…… あいつの中の俺は、大輔って呼ばれてた頃の俺じゃなくなったんだよな……。 幼なじみだった俺は、もう消えちまったんだ……。 俺はジャージに着替えると、荷物を肩にかけ体育館へ走り出した。