「行きましょ。郁斗傘は?」
手ぶらの俺の姿を見て彼女はそう言うと、
「もぅ~あれほど天気予報で言ってたのに」
と、お気に入りの桜色の傘を差し出した。
「入れてあげるから、郁斗が持ってね」
そんな俺達を、高枝先生はずっと見ていたと思う。
なんせ視線を感じていたのだから。
「それじゃ……高枝先生お先です」
俺が軽く頭を下げると、彼は、
「あ、ああ。お疲れ様です」
と、俺達を見送った。
桜色の傘を持つ俺の腕に、淘子の腕が絡みつくと、
彼女のお気に入りの香水が、雨の匂いを消し去っていった。
「もういいだろ?」
校門を出て暫く歩いた所で、そう切り出すと、まとわりつく淘子の腕をゆっくりとはずした。



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