「俺さ、今は松浦と付き合ってるんだ。彼女は訳あって今入院してる。少しでも傍にいてやりたいし、要らぬ心配かけたくないんだ。悪いけど……俺には出来ない」
淘子は暫く黙って俺を真っ直ぐ見つめる。
言いたい事が沢山あるんだろう。
でも、これは俺が決めた事で、彼女に何を言われようが関係ない。
自分が選んだこの現実を、間違っていたとは思わない。
「あんなに忠告したのに。でもあなたが選んだ事だもの。私は何も言わないわ。
でも、それとこれとは別。本気で困っているの。もう迷惑はかけないわ。これでおしまいにする。だから……私を助けて」
淘子の目が、うっすらと赤見を帯びていく。
彼女の最後の頼み……。
どれくらい時間が流れたのか……。
俺は目を閉じ大きく深呼吸をすると、
もう一度淘子の顔に目を向ける。
「わかった……。ただし、一週間だけだ」
「有難う……郁斗」
淘子は俺に抱き付き、
「じゃぁ、また後で」
と、呟くと、そそくさと準備室を出て行った。



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