爽やかな笑顔。
柔らかい茶色の髪。
スーツ姿の、見たこともないその人に、お礼を言うと、少し躊躇いながらも、その手を借りて、ゆっくりと立ち上がる。
「痛っ!」
「足、痛めたのか?」
そう言うやいなや、彼は、床に散らばった本を脇に挟むと、私に背を向けしゃがみ込んだ。
……え?
「おぶってやる。歩けないんだろ?」
「え……あの、でも……」
「ほら、遠慮なんかしない」
戸惑う私なんてお構い無しに、彼は、軽々と私をおぶり、たんたんと歩き出す。
茶色の柔らかい髪が、時折私の鼻をくすぐると、
シャンプーの仄かに香る良い匂いが、私の思考をフワフワとさせた。
私……何だかドキドキしてる。