「これはサービス。」


店員は個包装の、
さっきとは違うおつまみをポケットからじゃらじゃら出し

ニヤけもせず店内へ戻って行った。

帰りぎわにポツンと、

「暇なの。」


向こうを向いていた店員は、今きっといい顔をしてたに違いない、と私は思った。

三時間近くその場所を占拠してまでも
私たちは語り尽くせない。
彼に話したい言葉が次々に浮かんで、
聞きたい事が溢れてくる。
時間を埋め足りないのだ。
私たちを知ってる人が
そこに居さえしなければ
場所なんてどこでもいい。
二人で話したい事が山ほどある。
知ってもらいたい事が山ほどある。

「そろそろ行くか」

彼は後片付けを素早くして
席を立った。


「ご馳走様でした。ありがと」
私は売店の自動ドアを一度開け、一礼した。


“なんだか今日は楽しい”


電車に乗り遅れる事がなかったのも、
サービスを受けたことも、
今日が晴れてることも。


全部“ツイテル”気がした。