「プリクラ撮ろうぜ」

彼は足早に場所を移す。

撮ってどうする気?
持ち帰るワケにはいかない、分かってるクセに。

でも、さっきの携帯で撮った写真と一緒。

この瞬間が思い出だ。


プリクラは進化していた。
履歴書に貼るような
1ポーズの連射バージョンなんて
もうどこにもない。


二人はコンピューターの指示どおりにポーズを変え、できたプリントにイラストや文字を書き足す。

“これ、どーする気だ”

私たちはそう思いながらもむやみに新しい技術を
駆使してみた。

笑い合いながら
出来上がって行く作品は

結局は誰の目にも
映ることはないんだけど。
どんなに
存在感が溢れていても

それは私たちの
心の中だけ。

記憶の中にだけ。

大事な
確かな
物質だった。