理緒が服の裾で汗を拭きながら、顔を男の方に向けた。



「…あいつ、見てない?」


男が苦笑を漏らした。


「あいつ…?あぁ、なるほどな。見てねぇけど…また何かやらかしたのか?」
「庭の掃除してって頼んだのに、さぼってどっかに逃げたのよ!!」



理緒の声に気づいたのか、畑仕事をやっていた男の奥さんが家から出てきた。


「理緒ちゃん、あの子ならさっき広場で見かけたわよ」
「本当?ありがとう」
「びしっと言ってやんなよ!!」


理緒は頭を一度だけ下げ、広場に走って行った。