神威異伝





「記…憶がない、だと…?」



嘉禄の目が大きく開かれる。


しかし、直ぐに含み笑いが漏れた。



「忘れたのか…くくっ、滑稽だな。自分が誰かも、私がお前に何をしたかも忘れたか」
「あぁ、記憶にないね…だが」


十夜が嘉禄を睨みつけながら、はっきりと呟く。




「何でだろうな、あんたを見てっと…怒りが込み上げてくるっ!!」



言い終わるよりも先に、十夜は嘉禄に漆梁を突き入れた。


嘉禄は漆梁の切っ先から体を横にずらし、避けようとする。



だが、漆梁は嘉禄の体に当たりこそしなかったが…嘉禄のマントをかすめた。