「女子供は家に入り戸を閉めて身を守っています…でも理緒が―…」
男から理緒の名が出た途端、十夜が箒を投げ捨て、男に近寄った。
「理緒がどうしたんだ!!?」
それこそ十夜は胸ぐらを掴みそうな勢いだったが、賢雄がそれを手で制した。
「落ち着くのじゃ、十夜。話はまだ途中…そうじゃろう?」
賢雄がそう問いかけると、男が頷く。
「今は理緒が応戦してくれています。さっき日向とすれ違ったから、日向も市場に向かっている筈ですが…」
男の話を聞き、十夜が賢雄に声をかけた。
「大爺…っ刀、俺の刀…漆梁(しつりょう)は何処にあるんだ……?」
十夜の言った言葉に賢雄は目を見開いた。
「十夜…お主、記憶を……っ!!?」
「今はそんな事どうでも良い!!」
十夜が賢雄の肩を掴み、声を張る。
「今は理緒を助けに行く事が先だ!!だから…俺の漆梁を早くっ!!」


