神威異伝





十夜がふーんと呟き、ぼりぼりと頭を掻く。



「悪運強いんだなー、俺って」
「それを言うなら強運の持ち主…ではないか?」


賢雄が顎を擦りながら言うと、十夜が苦笑した。



「……俺が強運持ってたんなら記憶、無くしたりしないねぇよ」



そう言った時の十夜は、何処か悲しそうだった。


賢雄が声をかけようとしたが、それよりも先に十夜が口を開いた。




「そういや、大爺。理緒は―…」
「…ちょう、村長っ!!」



十夜の言葉を遮るように、一人の男が庭に駆け込んで来た。


男は腕から血を流し、肩で呼吸をしている。




その尋常ではない様子から、思わず賢雄の眉に皺がよる。



「何事じゃ?」
「……た、旅人らしき人達が突然襲って来たんです!!」
「なんじゃと…っ!!今、市場はどうなっておる?」