神威異伝





理緒は眉をしかめ、早歩きで市場に向かっていた。



途中で中年の男に


「どうした顔赤いぞ?理緒」


…などと話しかけられたが、理緒はそれこそ更に顔が赤くなる勢いで


「別にっ!!」



…と、声を張り更に歩く早さを早めた。





白月村の市場は、村の出入口付近に開かれている。



それは、旅人達が時間をかけず買い物を済ませられるように…という、賢雄の配慮から作られたのだ。





昼間という事もあり、市場は賑やかだった。

夕飯の買い出しに来た、子連れの姿が多いように見える。



理緒もその中に混じり、夕飯に必要な食材を探していた時…


不意に、村の出入口に人の気配を感じた。



理緒が出入口の方に視線を向けると、そこには見知らぬ人が数人立っていた。