「……ただで通させてくれる訳ないよな」
愛用の槍を構え、日向が呟く。
「上等よ、やってやろうじゃない」
理緒も両手に短刀を構えた。
日向が暁に声をかける。
「暁、お前は荷物を持って離れ─……」
「大丈夫だよ、日向にーちゃん」
そう応えた暁の両手の爪が突然伸び、刃物の様に鋭くなった。
微かに開かれた口からも、牙が姿を見せた。
「オレだって戦える、だから…大丈夫っ」
自分達の前に立つ二人に物怖じするどころか、戦う意志を見せる暁に日向は驚く。
だが、その暁の姿に頼れるものを感じた日向が言った。
「……よし、頼りにしているよ。暁」
暁は黙って頷く。
すると、舞雲が口を開いた。
「……あらぁ?そこの子、一昨日逃がしちゃった黒狼の坊やじゃない?」
「なっ!まさか、てめぇが暁に怪我させたのか!?」
十夜が声を張ると、舞雲が笑った。
「私はなーんにもしてないわよぉ?ただ“影”に坊やを襲うように指示しただけなんだから〜」
「結局あんたのせいなんじゃない!」
理緒が怒りを露にすると、舞雲が口元を歪めた。
「あの時は逃がしちゃったけどぉ〜…今日は逃がさないわよ?」
そう言った時の舞雲の声の冷たさに、暁は思わず身震いをした。
……半分黒狼の血を引く暁だからこそ、動物的本能で舞雲の非情さを感じとってしまったのだ。


