白山を下りきった十夜達の目の前に、草原が広がった。
そよ風にゆられる草の海に……二つの影があった。
それが誰なのか十夜達に分からない筈がなかった。
──昼間の明るさに目立つ、漆黒の色。
「やっと出てきたわねぇ〜待ちくたびれたわよ」
影の一つが口を開いた。
どちらもフードを被っていて顔は分からないが、その声と口調で分かる。
今の声は、あの集団で唯一の女…舞雲である。
「誰も待っててなんて頼んでないわよ。勝手に待ってたのはそっちでしょ?」
「んふふ…。やっぱりあんた、気に入らないわぁ」
理緒が言い返すと、舞雲が笑った。
しかし、笑っているのが声だけだと分かる程…舞雲は殺気だっている。
「……嘉禄は、いねぇんだな」
荷物を放り投げ、十夜が言った。
それに応えたのは舞雲ではなく…もう一つの影だった。
「嘉禄様には大事な用がある。貴様らに構っている時間などない」
その声は男のものだったが、嘉禄とも擂雲とも違う…斎雲の声だった。
「だったらお前らに用はねぇ。そこをどけ」
十夜が腰布に差していた漆梁を抜く。
日向と理緒、暁も荷物を下ろす。


