神威異伝




──日が天高く昇りきった頃。

澪の作った昼食を食べ終えた十夜達に、次の村…白野村を目指し旅立つ時がきた。


「本当にありがとうございました。保存食もこんなに頂いて…」
『気にするな。私には、これくらいしか出来ないからな』
「いえ、本当に助かります」


日向が頭を下げると、澪が手を差しのべた。

日向も手を差し出し、握り交わした。

理緒も頭を軽く下げる。


「お世話になりました。澪さんの料理、すごく美味しかったです」
『気に入ってもらえて良かった。また来るといい』
「はいっ」


理緒にも手を差し出し、握手をする。


「今度来るのは、この“呪い”を解いた後だな」
『あぁ、待っている。…暁を頼んだぞ』
「任せとけ」


十夜から手を差し出し、澪と握り交わした。


『……暁』


澪は、先程からずっと黙り込んでいる息子の名を呼んだ。

暁はうつ向いたまま返事をしない。

…そんな暁の頭を撫で、澪が言った。


『達者でな暁。いつもお前の事を母さんが見守ってくれている…その事を忘れるな』


暁が澪に抱きついた。


「お父、行ってきます…っ」


涙を必死にこらえ、暁が呟いた。

──いくら自身から旅に出たいと言ったとしても、やはり淋しいのだろう。


『……あぁ、行ってこい。暁』


暁の頭をぽんぽんと叩き、澪が微笑んだ。

……こうして十夜達は澪と別れ、白山を下っていった。