理緒が盛大にため息を吐く。
「そうだけど…。何も、今更言わなくても良いじゃない」
十夜が首を横に振る。
「ちゃんと感謝は言葉にしなきゃ駄目だ、って言われたからな」
「十夜…あんた思いだしたの?」
理緒は十夜がその言葉を無くした記憶から取り戻したのかと思い、問いかけた。
だが、十夜から返って来た言葉はその期待を裏切るものだった。
「違う違う。さっきのは、大爺に教えてもらったんだ」
大爺とは賢雄…つまり理緒の祖父の事である。
「…そう。おじいちゃんに、ね」
理緒がため息混じりに呟くと、十夜が首を傾げた。
「何で理緒が残念そうにしてんだよ」
「べ、別にっ!!って言うか、あんたは良いの?」
「…?何が?」


