「言い忘れてた事があったんだけどさ…」
「…何よ」
理緒が十夜の言葉を促すように呟くと、十夜がへらっと微笑んだ。
「ありがとうな、俺を助けてくれて」
理緒は、十夜の言葉の意味を理解するまでに数秒かかった。
「……はぁ?」
そして、言葉の意味を理解しきると、気の抜けた声をだしてしまった。
十夜が頭をかく。
「何でそんな声だすんだよ理緒…あれ、意味分かんなかったか?」
「意味は分かったわよ。ただ、あんたが突然そんな事言うから…」
だってよ…と呟き、十夜が話し始める。
「俺、まだ理緒に助けてもらった事に“ありがとう”って言ってなかっただろ?」
確かに十夜を見つけてから、今日まで。
何かと理緒は十夜の世話をしてきたが、十夜を見つけた日の事について礼を言われた事はなかった。


